知っておけば騙されない!家を買うときに気をつけたい不動産売買契約書の基礎知識

不動産売買契約書は、家を買うときに最も重要な文書です。売買契約をするときは、しっかりと契約書を読み、契約内容についてきちんと理解をしておかなければなりません。なぜなら、契約をした後になって「そんなの聞いていない」「話が違う」といったクレームは通らないからです。
ここでは、悪質な売主や仲介業者に騙されないための、「売買契約書のチェックポイント」についてご紹介していきます。

家を買うときに売買契約書が必要な理由


家を買うときは、買主と売主が不動産売買契約を結びますが、安全に取引を行うためには売買契約書が必要です。原則として、不動産売買は買主と売主が合意すれば口約束だけでも契約が成立します。しかし、後になってトラブルが発生したときに、契約内容の証拠となるものがなければ「言った・言わない」の紛争になりかねません。そこで、売買契約書としてきちんと書面を残すことでトラブルを未然に防ぐ効果があるのです。

実際に家を買うときは、不動産会社が仲介業者として買主と売主の間に入り取引を行うのが一般的。その際に仲介業者が売買契約書を作成してくれます。住宅購入は個人間売買のケースが多く、不動産の専門家が介入していたほうが安全な取引が行えます。

例えば土地を買って家を新築する場合、建物はハウスメーカーや工務店に建設してもらう場合がほとんどですが、土地の所有者は個人であることがよくあります。また中古住宅の場合も個人が売却に出していることが多く、個人の売主から家を買うときは、取引をスムーズに行うためやトラブルを未然に防ぐためにも仲介業者の存在が必要不可欠になってきます。

売買契約書は住宅ローン審査に必要

多くの場合、家を買うときは住宅ローンが利用されています。住宅購入費用の全額を現金だけで支払うのはあまり一般的ではありません。住宅ローンの利用には金融機関の審査があり、このときに不動産売買契約書の提出を求められます。住宅ローンの審査には事前審査と本審査の2通りがありますが、売買契約書は本審査の際に提出します。銀行としても、書面がなければローン申請者が本当に家を買うのかどうか分からないため、売買契約が締結されたという証拠として契約書が必要になるのです。

注意点として、売買契約書は不動産仲介業者が作成したものでなければ銀行は融資審査をしてくれない場合があります。例えば個人間の不動産売買をするときに、多くの場合、仲介業者の記名押印がない契約書では融資審査の対象になりません。そのため住宅ローンを利用するときは、たとえ身内や知り合い同士の不動産取引であっても仲介業者に介入してもらうことになります。

「売買」契約書と「媒介」契約書の違い

不動産「売買」契約書は、家を「買いたい人」と「売りたい人」が取引をした証拠として残す文書です。「売買」契約書には、売買代金や対象不動産の表示などが記載されています。これに対し「媒介」契約書は、家を「買いたい人」と「不動産仲介業者」が交わす契約書のことで、個人が仲介業者に「家を買いたいから取引をサポートしてほしい」と依頼することで媒介契約が成立します。

媒介契約書には、媒介を依頼した人と、不動産の仲介を行う宅地建物取引業者の情報や成約に向けての業務、報酬額などが記載されています。

売主の場合も同様に、家を売りたいときは仲介業者と媒介契約を締結して取引を進めるのが一般的です。

違約金が発生する理由


不動産売買は大きな金額の取引なので、契約違反が起きたときは損害も多額になることがあります。そのため、契約書には契約違反による違約金についての取り決めも記載しています。ただし、違約金が発生するのは「契約締結後」に契約違反があった場合です。まだ売買契約もしていないのに違約金が発生することはありません。

例えば売買契約締結後に、買主が住宅購入の代金を売主へ支払ったのに売主が家を引き渡してくれないケース。この場合は売主の債務不履行により契約違反になるため、買主は売主へ履行の催告をしたうえで契約を解除して売主に違約金の支払いを求めることができます。

違約金の詐欺に注意

では逆に、まだ売買契約を締結していない場合はどうでしょうか。例えば買主が、売主と取引をするために家の購入準備を進めているのに、売主が一方的に「やっぱりこの家は売らない」と言い出したようなケース。この場合は、まだ売買契約をしていないので違約金が発生することはありません。ところが、悪質な仲介業者によっては、まだ契約をしていないのに違約金を請求してくることがあります。

例えば住宅購入を検討している人が、しつこい仲介業者に中古マンションの購入を強要されて買付(不動産購入申込書)を出したものの、その後、不安になって断った。

この場合、悪徳業者は「買付を出した後はキャンセルなんてできませんよ」「キャンセルをしたいなら違約金を払ってください」などと言って脅してくることがあります。前述したように、契約をしていないのであれば違約金を支払う必要はありません。買付は自由にキャンセルすることができるので、悪徳業者の言いなりにならないように毅然とした態度で断ることが大切です。

ただし、買付がキャンセルできるとはいえ、正当な理由がなければ仲介業者や売主からは嫌がられることもあります。正当な理由もなく、買主の一方的な都合で頻繁に買付をキャンセルしていると、仲介業者が相手にしてくれなくなってしまうリスクもあるので注意が必要です。

不動産売買契約書のチェックポイント

不動産売買契約書の中にはどんなことが書かれているのでしょうか? 売買契約書を見るうえでのチェックポイントを解説していきます。

不動産の表示

売買対象となる不動産に関する表示です。土地の所在地・地目・地積・持分や建物の所在地・構造・床面積・家屋番号などが記載されています。契約書の内容が登記簿(登記事項証明書)と一致しているか確認しておきましょう。

不動産詐欺の事例として、買主は「〇〇町一丁目250番」の中古戸建を買うつもりなのに、売買契約書には悪徳業者が所有している隣地の「251番」が記載されており、いつの間にか悪徳業者の物件を契約させられてしまう。こうした詐欺にあわないために、きちんと契約書と登記簿の中身を確認しておくことが大切です。

ちなみに登記簿とは、不動産の権利に関する内容を法的に登記(記録)した帳簿のことで、法務局で登記事項証明書の写しを交付してもらえます(※印紙代が必要)。たいていは仲介業者が早い段階で取得しているので、確認しておくとよいです。

売買代金・手付金・支払い方法や期日

取引をする不動産の売買代金や手付金、支払い方法とその期日などが記載されています。売買代金に間違いはないか、手付金や支払い期日の記載はあらかじめ取り決めた内容と一致しているか、などを確認しましょう。
手付金は売買代金の1割程度が一般的ですが、売主と相談して具体的な金額を決めます。

手付金については、「家を買うときに頭金はいくら必要?全国平均や最低必要な頭金について解説」の記事の中で詳しく解説していますのでぜひご覧になってみてください。

また、手付金があまりにも高額な場合は「持ち逃げ詐欺」にあうケースもあるので注意が必要です。その場合は、できるだけ契約前までに売主や仲介業者がどんな人なのかを確認しておくとよいです。

例えば、新たに取得した登記簿で不動産の所有者名義を確認し、売主の本人確認種類(運転免許証や保険証・住民票など)と一致しているかをチェックする、といった方法があります。仲介業者についても、商業登記簿(登記事項証明書)で確認できます。商業登記簿には、会社名、住所、設立日、代表取締役やその他役員の氏名、資本金などが記載されているので、契約前にチェックしておくと安心です。
ちなみに登記簿関連は法務局で写しを発行してもらえます(印紙代が必要)。

土地の実測面積と精算

実際の地積が登記簿と一致しているか確認するために、売買契約までに土地の実測を行うことがあります。土地面積の実測が登記簿と一致していない場合は、地積の差に応じて精算を行います。少し複雑ですが、この場合、売買代金は登記簿の面積に従った金額で行い実測面積との差を精算金で補うことになります。

補足として、一般的に地積が登記簿と実測で異なるときは実測面積に坪単価を乗じた売買代金で取引をすることが多く、この場合は精算金の必要はありません。契約した後になって聞いていた面積と違う、といったことにならないよう確認しておくことが大切です。

境界の明示について

購入する住宅の敷地と隣地との境界についての取り決めです。売買契約後に、隣地との境界確定をすることがありますが、残代金の決済と住宅の引渡しまでに境界標を設置することや、費用負担は誰がするのかについて記載されています。
境界確定の費用は、売主が負担する場合や、売主・買主の双方が費用を折半する場合などがあります。「いつまでに」「誰が」「誰の負担で」境界確定をするのかチェックしておきましょう。

いい加減な仲介業者は、売主と相談せず境界確定費用をすべて買主に押し付けようとしてくることがあるため、契約前にきちんと協議しておく必要があります。

所有権移転の登記


家の所有権が移転する登記ついての記載です。一般的には、買主が売主へ売買代金の全額を支払い、売主が受領したあとに名義変更をするため所有権移転登記を行います。売買契約書には、所有権移転登記の費用を誰が負担するのか」についての文言が書かれています。一般的に、所有権移転登記費用は買主が負担する場合が多いです。

抵当権等の抹消

抵当権とは、銀行がお金を借りたい人へ融資をする代わりに不動産を担保として設定し、もし債務不履行(お金を借りた人が返済できなくなった)があったときはその不動産から弁済を受けることができる権利のことです。売主が住宅ローンを利用して家を買っている場合は銀行が抵当権を設定しているため、不動産売買によって新たな買主へ所有権を移すときは抵当権も消してもらわなければなりません。

売買を行う住宅に抵当権が設定されている場合は、物件の引渡しまでに売主の責任において「抵当権を抹消する」ことを約束する文言が契約書に記載されています。通常は、仲介業者が作成する売買契約書の雛形に初めから入っている文言ですが、念のため確認しておきましょう。

付帯設備等の報告

家の付帯設備についての記載です。売買契約時における設備の現況について、売主から別紙の
「物件状況報告書」「付帯設備表」などで告知を受けるのが一般的。付帯設備の報告には、主に以下のような内容があります。

⦁ 給湯設備の有無と状態
⦁ キッチン設備の有無と状態
⦁ 浴室・洗面・トイレ設備の有無と状態
⦁ 洗濯設備の有無と状態
⦁ 冷暖房機や照明器具の有無と状態
⦁ 建具や収納スペース等の有無と状態

付帯設備や建物の現況は売主にしか分からない箇所もあるので、しっかりと報告をしてもらいたいところです。付帯設備表を見て気になる点があれば早めに質問しておきましょう。

公租公課等の分担


主に固定資産税についての条項です。固定資産税は1月1日時点で住宅を所有している人に対して納税義務が課せられるため、すでに売主が固定資産税を納付しているケースが多いです。そのため、住宅を売買する年の「1月1日」から「引渡し日の前日」までが売主負担、それ以降を買主負担として固定資産税を精算します。
固定資産税精算金の詳しい金額については契約書に記載されていない場合があり、重要事項説明書のほうに書いていることがあるので事前に確認しておくとよいです。

契約不適合による修補請求等

これまでは瑕疵担保責任についての条項でしたが、2020年4月から施行される民法改正により「瑕疵」という言葉が使われなくなりました。「契約の内容に適合しないもの」という文言に変更されたため、売買契約書に記載されるのは契約不適合に関する条項となります。

瑕疵という曖昧な表現はなくなり、雨漏りや建物の構造耐力上主要な部分の腐食、シロアリ被害、給排水管の故障などが契約不適合な内容として明記されることになります。また、もし契約不適合があった場合は、買主が売主に対して修補の請求をすることができることも明記されます。

これまで、個人間取引なのに「売主の瑕疵担保責任を免責」するような特約を契約内容に入れられるケースがありました。しかし、民法改正により修補請求できる内容が契約書に記載されるようになったため「売主の責任逃れ」がされにくくなっています。

手付解除

手付解除ができるまでの期日が記載されています。売買契約をした後であっても、手付解除期日までであればお互いに書面による通知を行うことで契約を解除できます。
ただし売主が手付解除をしたときは、すでに受領していた手付金を速やかに買主へ返還し、さらに手付金と同額のお金を買主に支払わなければなりません。逆に買主が手付解除をした場合は、手付金の返還請求を放棄することになります。

契約違反による解除と違約金

買主・売主どちらかの契約違反によって契約が解除された場合の違約金について書かれています。これには前述した「契約不適合」による契約解除も含まれます。例えば買主が修補の請求をしたにもかかわらず売主が修補の対応をしないときは、相当の期間を決めて催告したうえで契約の解除と違約金の請求が行えるため、こうした内容についても記載があります。

一般的に、契約違反による違約金の額は、物件売買代金の20%としている場合が多いです。もし契約で取り決めた以上の違約金を請求された場合は、契約書や重要事項説明書をもって対抗することができます。

ローン特約


売買契約書には「融資利用の特約」と明記されているのが一般的です。住宅ローンを利用するときは、売買契約を締結した後に買主が銀行へ行き本審査の申請を行いますが、必ずしも申請が承認されるとは限りません。もし本審査が通らなかった場合は住宅ローンを組むことができないため、家の代金を支払うことができなくなってしまいます。このままでは契約不履行により違約金を払わなければなりません。こうしたリスクを回避するために、ローン特約の条項を契約書に入れているのが一般的です。

もし住宅ローンを組んで家を買う場合は、契約書にローン特約が明記されているか確認しておきましょう。

その他特約条項

最後に、その他特約についての記載です。不動産は他に同じものがないため、物件によって取引する内容は異なります。例えば分譲開発された土地の上に家が建っている場合、前面道路が公道ではなく私道になっていることがあります。こうした家を買うときに、私道の名義や所有持分などについての重要な内容があれば特約として記載されることになるのです。
その他、買主と売主の相談によってあらかじめ取り決めた重要事項なども明記されている場合があります。

まとめ

売買契約書は、家を買うときに買主と売主が約束した取引内容を証拠として残すための書面です。そのため契約書に記された内容が全てなので、契約書にないことを後から主張してもなかなか通りません。それほど重要な文書ですので、必ず内容をきちんと理解したうえで契約締結を行いましょう。

たいてい契約書は仲介業者が作成しますが、雛形に軽く入力しただけで簡単に終わらせる業者もいるため不動産のプロだからといって任せっきりにせず、自分でしっかりと内容を確認しなければなりません。原則として、契約前には必ず仲介業者による重要事項説明が実施されるので、そのときに契約書の内容も最終確認しておくとよいです。

分からないことがあればその都度、仲介業者に聞きながら、納得のいく契約になるよう心がけていきましょう。

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